
前回、骨惜しみするほうの世界から、骨惜しみしないほうの世界へ移住しようとの話を書きました。
これまでの数十年、停滞し続けてきた日本では、すきあらば骨惜しみするほうを選んできた人はたくさんいました。
しかし、さすがにそんなことを続けられる状況ではなくなってきました。
目次
- 日本が直面している厳しさ
- なぜ従業員は、この危機に無関心、無自覚なのか?
- 「骨惜しみしないほうを選ぶ人」への移住は、生き残るための選択
日本が直面している厳しさ
経営コンサルタントとして多くの経営者さんとお会いしていると、
危機感は半端なく、日本が直面している厳しさをひしひしと感じます。
そりゃそうです。
まず、通貨価値は下落し、実質購買力が低下しています。
もし円が1USドル=160円まで下落し、それが2年間続けば、日本の一人あたりGDPは3万ドルを割り込む可能性があります。
近年の「先進国」のボーダーラインは3万ドル以上で、昨年はギリシャとポルトガルがその資格を失いました。両国ともインバウンド観光業しかめぼしい稼ぎどころがありません。日本も円安でインバウンド観光業は好調ですが、それが意味するところは…ということです。
また、2011年の震災後の原発停止により、化石燃料を輸入し続けています。
これにより貿易赤字基調に転落。
挽回するには輸出で稼ぐことが必要ですが、EVシフトへの遅れから中国EVに急速にシェアを奪われ、ガソリンエンジン自動車の輸出は伸びていません。中国メーカーが「安かろう悪かろう」だったのは昔の話です。
その結果、日本の某自動車メーカーが経営危機に陥りました。

なぜ従業員は、この危機に無関心、無自覚なのか?
この状況を見れば、経営者の方々が危機感を持つのは当然です。
その一方で
「この日本の危機を、従業員は何も知らない、知ろうともしない」
「我々の危機感を従業員たちがまったく共有してくれない」
とも言います。
従業員がこうした危機に対して無関心、無自覚だと嘆きます。
しかし、それは当然なのです。
長年にわたって、国と企業が従業員を思考停止にしてきた結果です。
国や企業の「おかみ」のいうことを大人しく聞いていれば、悪いようにはしない。
あれこれ騒がないで、従順でいることを良しとすることを幼少期から教育し続けてきました。
例えば、ほとんどの従業員は所得の確定申告をせず、年末調整もおまかせ。
給与明細すらしっかり確認せず、税金や社会保険負担の実態を把握しようとしない人はたくさんいます。
賞与や昇給の査定で、「いくらもらえるか」「それは同僚と比べて多いのか少ないのか」はめちゃくちゃ気にするくせに、その額面からどれだけ税金や社保が引き去られているかは見ようとしません。

「よくわかんないけど、まあいいや、『おかみ』にまかせておけば大丈夫でしょう」という状態に置かれています。
これぞまさに「少しでも骨惜しみできる方を選ぶ人たち」の世界です。
自分で考え、疑い、調べ、探すという知的作業そのものを骨惜しみする。
おかみがなんとかしてくれるだろう、いや、なんとかしてくれないとおかしい。
そう安心したがって、自立よりもおねだりを選ぶ「骨惜しみ」こそが、現在の日本を覆う閉塞感の正体です。
「骨惜しみしないほうを選ぶ人」への移住は、生き残るための選択
しかし、みなさんご存知のように、従順でいれば安全や安定が保証される状況ではなくなりました。
円安、貿易赤字、主要産業の競争力低下により、「おかみ」がなんとかしてあげる体力がなくなってきているからです。
前回、骨惜しみしない世界への移住をおすすめしました。
これまで「骨惜しみしない人」になることは、同調圧力もあって、勇気が必要なことでした。
変わったほうが良いとアタマをよぎっても、「世話になったムラの先輩や仲間は裏切れない」と自分を説得してきました。
しかし、ムラの仲間たちの間で「手を繋いでいたところで、もはや全員は救われないのでは?」と疑心暗鬼が広がり始めたらどうなるでしょう?

変わらないと思っていた状況は、すぐに一変します。
昨日までの人気者たちも、一夜にしてアンチヒーローに落とされメディアから消えます。
安泰だと思われていた大企業も一日にして経営危機に音入ります。
気づけばムラから移住していないのは自分だけだった。そうなってもおかしくありません。
骨惜しみしない人になること、それはこれから生き延びるための合理的な選択に変わりつつあります。