前回は、「利他を実践するにはまず“自利ファースト”が欠かせない」とお話ししました。

では、実際に自利ファーストな生き方を身につけるにはどうすればいいのでしょうか。

答えは意外とシンプルです。
それは、“イヤなことを考えすぎず、さっさと片づける”習慣を持つこと。
そして、自分のエネルギーの使い道を、できるだけ前向きな方向へと整えることです。

目次

  1. 「イヤなこと」に心を奪われない
  2. 「考えすぎず、さっさと片づける」習慣が、自分への信頼を育てる
  3. エネルギーを「利他」に回す
  4. 「自分の機嫌」を最優先にする
  5. 自利ファーストの人は、柔らかく、強い

「イヤなこと」に心を奪われない

自利ファーストを成熟させた人は、周囲の環境や誰かの態度よりも、
「自分が自分をどう扱うか」をいちばん大切にします。

この社会には、どうしても気の合わない人、理不尽な出来事、報われない瞬間がたくさんあります。

でも、そうしたものをいちいち呪っていては心がもちません。
「そういうこともある」と受け止めて、淡々とやり過ごす。
そして、自分にとって大切な人や出来事にエネルギーを使う。

その切り替えができる人が、自利ファーストを生きている人です。

反対に、自己中心的な思考にとらわれたままでは、「イヤなこと」に遭うたびに心が乱れます。

「なぜ私ばかり」「どうしてこんな目に」と感じてしまう。

けれど、実は“イヤなこと”は誰にでも同じように訪れます。

成熟した人は、そこに特別な意味をつけない。
「自分だけが不運だ」と考えない。

だから、必要以上に傷つかず、前へ進むことができます。


「考えすぎず、さっさと片づける」習慣が、自分への信頼を育てる


自利ファーストを身につける近道は、「イヤなことを考えすぎずに、さっさと片づける」こと。

先延ばしにせず、感情を大きく動かさず、シンプルに処理する。
それだけで、心の消耗を大幅に減らせます。

たとえば、気が重い電話、たまった書類、返信していないメッセージ。

それらを「あとでやろう」と放置しておくと、心の中に“宿題”が積もっていきます。その小さな積み重ねが、無意識のストレスになり、自分への信頼をすり減らしていきます。

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反対に、イヤなことほど早めに片づける人は、「やれば終わる」という安心を何度も経験します。

「やる」と決めてやり切る。
その行動が自分への信頼を少しずつ強くしていきます。

同時に、考えても仕方のないことにエネルギーを使わないようにすることで、本当に必要なことに集中する力が戻ってきます。

イヤなことが起きても、「なんで自分ばかり」と考えこむ前に、「はい、そうきたか」「じゃあ次はこれをやろう」と切り替える。

感情より行動を優先する。

そうした姿勢を重ねるうちに、「自分はやればできる」という自尊が育ち、
日常のストレスに振り回されにくくなっていきます。

考えすぎずに行動すること自体が、自分を大切にする行為です。
自分のエネルギーを守り、必要なところに正しく使う。
それが、自利ファーストを実践する人に共通する強さです。


エネルギーを「利他」に回す


数ある「やらなければいけないこと」の中で、
実はモチベーションがあとから湧いてくる確率が高いのが“利他行動”です。

人のために一手間かけるのは、最初こそ面倒に感じます。
でも終えたあと、不思議と気分が軽くなったり、
「やってよかった」と思えたりする経験は誰にでもあるでしょう。
それは、自分を尊敬できる瞬間です。

だから、自利ファーストを極めた人ほど、自然に利他行動を選びます。
それが自分のエネルギーを最も健全に使う方法だと知っているからです。

利他とは「他人のための行動」ではなく、
「自分のために、他人に良い影響を与える行動」。

“情けは人のためならず”とは、まさにそのことを指しています。

「自分の機嫌」を最優先にする


自利ファーストの人は、常に自分の機嫌を整えようとします。
これはワガママではなく、上機嫌をキープするためのセルフメンテナンスです。

不機嫌で過ごすと、自分も他人も疲弊します。

だから、機嫌を損ねるものや人からは距離を置く。
SNSの無限スクロールをやめてみる、反応に疲れる人とのやりとりを減らす。

「これをやると自分の気分が落ちる」と気づいたら、静かに離れる勇気を持つ。

他人の評価や承認ばかりを求めてしまうと、
いつのまにか“いいね”という小さな報酬に依存してしまいます。
自利ファーストとは、その依存から自分を解放し、
「自分で自分の機嫌を取る」ことを最優先にする生き方です。

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自利ファーストの人は、柔らかく、強い


本当の意味で自分を大切にしている人は、
誰かに尽くしても「こんなにしてあげてるのに!」とは言いません。
見返りを求めずに、静かに行動する。
相手の発言に「でも」「だって」と反論する前に、
「そういう考え方もあるね」と受け止める。

それは、相手を“正す”よりも、
自分と相手の両方が上機嫌でいられることを優先しているからです。
その穏やかさが信頼を生み、周囲に安心感を与えます。

AIがどんなに進化しても、こうした「人の心を和ませる力」は代替できません。

これからの時代に本当に求められるのは、
知識でも肩書でもなく、自分を整え、周囲を軽くできる人。

その出発点が、“自分を大切にするための利他”、自利ファーストの生き方です。

次回は最終回として、「よくある質問編」。
自利ファーストと自己肯定の違い、他人への関わり方などを整理します。