前回は、「AI時代に残るのは“利他”の人だ」とお話ししました。
今回は、その利他に進むための第一歩「自利ファースト」について考えてみます。

目次

  1. 「自分を尊敬すること」が出発点
  2. 「やるべきこと」を淡々とやり切る
  3. モチベーションは“結果”であって“前提”ではない
  4. 自分を整えた人だけが、他人を大切にできる

「自分を尊敬すること」が出発点


利他行動の条件は、じつはとてもシンプルです。
それは、「自分を尊敬できること」。

たとえば、ミスをしたときに「もう自分はダメだ」「何度同じことをしてるんだ」と自分を罵倒していませんか?

もし同じ言葉を他人に向けたら、完全にハラスメントですよね。
それを自分に向けても、同じように傷つくのです。

本当の意味で自分を尊敬できる人は、ミスをしても「よし、どうすれば次はうまくいくか」を静かに考えます。

怒鳴らず、責めず、落ち着いてリカバリーする。
それが“自利ファースト”の人の共通点です。

一方、自尊が足りないと、周囲に怒りをぶつけてしまいがちです。

「誰も自分を大切にしてくれない」「社会が不公平だ」と世界を恨みたくなる。でも、その苦しさの根っこは、自分で自分を大切にできていないことにあります。


「やるべきこと」を淡々とやり切る


では、どうすれば自分を尊敬できるようになるのでしょうか。

それは、地味ではありますが「やるべきことを、やる」と決めて実行すること。しかも、できるだけ淡々と、毎日続ける。

これだけで、自分への信頼が少しずつ育っていきます。

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逆に、やるべきことを先送りしたり、見て見ぬふりをしたりすると、
自分の中に「できていない自分」が積み重なっていきます。

やがて心の中で自分を責めるようになり、それが苦しくなって、今度は他人を責め始める。

これが、自己嫌悪から他責に移行する典型的なパターンです。

でも、いくら自責や他責を繰り返しても、状況は変わりません。
解決策はただひとつ。「やるべきことを、やり切る」こと。

もちろん、やり切るにはエネルギーが必要です。
脳は体全体のエネルギーの約20%を消費する、といわれます。

だからこそ、「余計なことを考えない」ことが大切です。

余計なこと、というのは、
「なんで自分ばかりこんな目に」「運が悪い」「世界が間違ってる」
そうした考えごとに脳のエネルギーを奪われてしまうこと。

一見ただの愚痴でも、脳のリソースは確実に削られます。
その結果、本当に必要な「やり切る力」が残らなくなってしまうのです。

自利ファーストの人は、それをよく知っています。
「面倒だな」「いやだな」と思った瞬間に立ち止まらず、すぐに着手する。
「淡々とやる」ことを習慣にしています。
終えたときに得られる小さな達成感こそが、自分を尊敬する最初の一歩です。

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モチベーションは“結果”であって“前提”ではない


自利ファーストな人は、淡々とやることを習慣にしていますが、多くの人が「モチベーションが上がらないから動けない」と言って止まってしまいます。
でも実際には、モチベーションがないから動けないのではなく、動かないからモチベーションが上がらないのです。

少し手を動かしてみたら、意外と面白かった。
やってみたら成果が出て嬉しかった。
そんなふうに、モチベーションとは“後から湧く”もの。
行動のあとに心が追いついてくるのが、本来の自然な順番です。

「やる気が出たらやる」ではなく、
「やり始めたら、やる気が出るかもしれない」。
自利ファーストの人が共通して持っている考え方です。

モチベーションを“やらない理由”に使ってしまうのは、自利の逆方向です。

やる気を探すよりも、「とにかく始める」「とにかく終わらせる」を積み重ねる。

その地味な行動の連続が、いつの間にかモチベーションを底上げし、
「自分はやればできる」という自尊を育てていきます。

そして、自尊が育つと、他人に対しても穏やかでいることができます。

自分を整えた人だけが、他人を大切にできる


「利他」とは、他人のために自分を犠牲にすることではありません。
自分を大切にし、自分を尊敬できる人が、自然と他人を思いやる。

それが本当の利他です。

誰かに優しくするのも、手を貸すのも、
「自分がそうしたほうが気持ちいい」と感じるからこそできる。
つまり、利他は究極の“自利”でもあります。

自分を責めない、他人も責めない。
淡々と、丁寧に、やるべきことをやり切る。
その姿勢が、AI時代を生き抜く人の共通点です。


次回は、そんな「自利ファースト」を日常の中でどう実践していくか――
“やり切る力”を磨く具体的な方法についてお話しします。