前回まで2回にわたって、これからの日本では「骨惜しみしない方を選ぶ」世界への移住をおすすめしてきました。

今回は、「骨惜しみするか、しないか」の話を、「これから英語をトレーニングするか、しないか」で具体的に考えてみたいと思います。

目次

  1. 英語なんて、必要ある?
  2. AIは働く人を、二極に分ける。
  3. ごく少数の指示する側に回りたいなら?
  4. ヒトが仕事の主役である時代は、終わりつつある。
  5. 生き残る選択肢として、どちらを選ぶ?

英語なんて、必要ある?

まず、最近よく聞くのは「これからの時代、英語は本当に勉強する必要があるのか?」ということ。

確かに、AIの進化によって、外国語学習の必要性は大きく変わりました。
翻訳技術がここまで進んだ今、「英語なんて自分には必要ない」と感じるのも自然です。
AIの脅威的発達で、外国語学習の必要性は驚くほど低下していますからね。
実際、これからの社会では「英語なんて習得しなくても大丈夫」という生き方も十分に成立します。

ただし、それが可能なのは「指示を受ける側」で働く場合です。

AIは働く人を、二極に分ける。

これから数年でAIが実現してしまうであろう大きな変化のひとつは、
働く人を「指示を受ける大多数の人」と「その指示を最適化するごく一部の人」の二極に大きく分けることです。

もちろん今までの人類の歴史でも、社会や組織は「指示を受ける人」と「指示する人」に分かれてきました。外資ならIC=individual contributor と、PM=people manager の違いですね。これからは日本でもこの格差が大きく開くと思います。いったん「指示を受ける側」になってしまうと、もはや思考すら求められなくなる。

求められないというより、思考を禁止されるかもしれません。

というのも近い将来、ほとんどの「仕事」は、「指示する人から指示されたことを・指示された段取りで・指示されたクオリティに仕上がるように・指示されたスケジュールで」行う、というものになるからです。

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これからの仕事は、AIと自動化の力によってますますマニュアル化されていきます。「これを、こういう順番で、こういう品質で、こういう期限でやってください」という仕事が増えます。このような仕事では、考えすぎたり、余計な工夫をするよりも、指示された通りにきっちりこなすことが求められます。

指示を受ける側は「言葉の壁がない仕事」へとシフトさせられていきます。こうした働き方で生きていく限り、英語は必要ありません。

英語はAIが日本語に訳してくれますし、そもそも最低限の日本語ができれば仕事は回るように設計されていきます。

仕事そのものが「最低限の言語能力でわかるように翻訳された指示に従うだけ」になるので、外国語の勉強などまったく必要ありません。

ごく少数の指示する側に回りたいなら?

この状況を、ヒトを雇う側からみると、働くヒトの(言語)能力にかかわらず一定の成果を出せるように指示を出すことが雇う側の義務になります。ほんの一部の方が、AIを通じてヒトと機械に指示を出す重要な役割を担います。「中間管理職」のような謎の職位はなくなり、ごくごく少数の方々だけが最適な指示を追求する仕事を寡占することになるでしょう。

もしあなたが「人や機会に指示する側の少数派側」に回りたい、と思うなら、話は変わってきます。

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指示を出す側になるには、より広い視野と一次情報が不可欠です。
特に、世界中の最新の動きをキャッチアップし続けるには、英語が読めることがとても大きな武器になります。
研究論文、技術情報、ビジネスレポート、グローバルなニュース。一次情報の多くはまず英語で発信されます。

もちろん、AI翻訳もありますが、翻訳された時点でそれは「二次情報」。
ごく少数の「指示する側」に回りたいなら、自分自身でこれらの情報を高速でゲットできなければならない。だから英語は必須ということ。
一次情報のスピード感やニュアンスを理解するには、やはり自分で読める力が必要です。

「AIが翻訳してくれるから英語はいらない」と思っている人は、二次情報・三次情報など「誰かが加工した使い古しの(ニセ)情報」にしか触れていない、という現実にすら気づけません。なぜなら情報がないからです。

ヒトが仕事の主役である時代は、終わりつつある。

この先、変化のスピードはめちゃくちゃ速いです。繰り返しますが、労働人口が激減するからです。

これまでは、仕事の主役は「ヒト」でした。
学歴がある人、体育会系で根性のある人、データやITに強い人──その時代ごとに「主役」とされる人材像は変わってきましたが、いずれにせよ主役は常に「ヒト」でした。

しかしこれからは、少子高齢化によって労働人口が激減していきます。
その代替としてAIが急速に導入されていきます。AIが進化したから、ヒトがAIに支配されるのではなく、AIの高度化が人口減少にたまたま間に合いつつある、という状況です。

こうした構造変化の中で、これまでのように「人間であるだけで価値がある」時代は終わりつつあります。
この流れは、もう元には戻らないでしょう。


つまり、「英語を学ぶかどうか」というのは単なるスキル選択ではありません。
あなたが「どんな未来を選ぶか」「どちらの世界に移住するか」の象徴的な分かれ道です。

指示される側で生き延びることを選ぶなら、英語なんてまったく不要。なまじ英語の一次情報に触れて余計なことを考え、与えられた指示に疑問を持つよりも、骨惜しみしまくって指示を待っていたほうが安泰です。

生き残る選択肢として、どちらを選ぶ?

いま企業は、若年層の給与を猛烈に上げ始めています。そのかわり、これまでの旧制度の年功序列で高給になってしまった中高年への「早期退職」圧力は強まるばかり。

若年層の給与は最初は高いですが、以前のように昇給し続けることもありません。つまり日本企業は若い時から(これまでに比べたら)高給を払う代わりに、ほとんどの従業員に「指示に従うだけ」になってもらい昇給を抑える、という仕組みにシフトし始めたのです。

昇給なしで「指示を受ける」「マニュアルに従う」ことに徹すれば、長期間にわたってホワイトな労働環境で在籍できます。

しかし、ステップアップや昇給のワクワク感はなくなります。

これを拒んで、働くことにワクワクを求めるなら、ごく少数の「指示を出す方」を目指さなくてはなりません。

そうなると、世界の一次情報をいち早く得るために、英語は必須。これはこれでホワイト勤務とは縁のないハードワークと重責を背負わされます。

生き残りの選択肢として「英語が必須なほう」「英語なんて邪魔なほう」のどちらを選ぶか。

・骨惜しみしない人として、自分の頭で世界とつながっていくのか
・骨惜しみする人として、指示を待ち、翻訳された情報に従って働くのか

どちらも間違いではありません。

どちらを選ぶかは、あなた次第です。